2012年から2015年までの4年間。私はフランスの美しい村々に約1か月ほど滞在しながら、2週間の個展を開催しました。
そして、個展の後は、スケッチをしながらその地域を廻るというかなりタフなツアーでした。
今回は初めてのフランス展の思い出、フランスのギャラリーについて、ビジネス事情など、思うままに書いていきます。
フランスで個展を開いたきっかけ
私がフランスで個展を開こうと思ったのは、2009年に南西フランスの地方都市を廻ったのがきっかけでした。その光と色の美しさに魅了され、小さな村を滞在しながらスケッチするという正に夢のような経験をしました。
その際、せっかく滞在するなら滞在費ぐらいは稼ごうと思い(笑)、ならば個展を開こうと思い立ったのです。
フランスのギャラリー事情
フランスの地方都市は、小さな村に至るまでギャラリーや村の展示施設(教会跡や古いホール等)が必ずあります。そして。それは日本では考えられないくらい確実に超素敵な空間です。
人気のある場所やバカンスの時期などは予約が取れないほどで、展示許可を受けるにも審査があり、ちょっと面倒です。しかし、非常に素敵な空間を無料で借りれたり、比較的安価で自由に使うことが出来ます。
私の場合は、滞在先の宿のご主人に書類を役場から取ってきてもらい自分で書きこみ、必要な画像を添付して、ネット経由で書類を送りました。申し込みは基本1年前から受け付けしています。
ただ、問題なのは展覧会開催の細かい日程は役所が決めるため、こちらの都合の良い日程になるかどうかは向こうの書類が届くまでわからないこと。
なので、個展開催の日程が決まってから旅のスケジュールを組むことになります。
▲ゴルドの個展開催地。美しい教会美術館です。
一番最初に申し込んだ南仏の古都ゴルドからの許可通知は必要書類を送ってから、すぐに届き、びっくりしました。しかも予想していない日程、4月30日からと。。。
申し込みがギリギリ1月だったので大慌てで準備をしたものです。
許可通知が出たところは、ゴルドのど真ん中、古い教会がギャラリーに改装してあり、スペースも広々としています。前年訪れた時に、是非ここに自分の絵画を並べてみたいと思っていた場所でした。
フランス ゴルドでの個展開催の様子
個展の期間中は基本、本人かあるいは予めこちらで依頼した人が鍵の管理から開け閉め、セキュリティ等々すべてしなければなりません。
特にゴルドは観光地、その時期には大勢の観光客で一杯になります。
朝から定期便のように観光バスが到着。その人たちがドドッと会場になだれ込みひとしきり騒いで引く。。。日によってはその対応でヘロヘロになります。
▲個展の様子。まるでお祭りのように楽しんでいました。
絵が好きな特にヨーロッパの観光客は話も大好き。
こっちが理解していようがいまいが、とにかくよくしゃべる、何か聞く・・その対応だけでもかなりきついものはあります…。
しかし、大概の人々は遠くから、はるばる絵を担いで来たエトランジェにリスペクトをもって接してくれるので、ついつい頑張れてしまいます。
ギャラリーの近所のお店のマダムとも親しくなり「ちょっとお昼食べてくるから留守番お願い!」なんてお付き合いも出来るようになります。
個展の後半の1週間は、ただ会場に座っているだけでは楽しくないのでギャラリーの入り口でイーゼルを立てながら周りの教会やらカフェを描き、その場でそのスケッチも販売しました。
フランスでの個展はビジネス的に成功したのか?
さて、2週間通してビジネスとしてはどうだったのか・・・。
もちろん観光客も見てくれますし多少買ってくれますが「思ったほどあてにならないかなぁ」というのが私の率直な感想です。
正直、ビジネスとして成功を収めたかどうかより、地元の住人がどれだけ来てくれるかが大事な気がします。要は「自分の作品との出会いをどれだけ増やせたか」ということです。それはもちろん作品の評価を自ら確認するためでもありそして特に
フランスの場合、その場で作品が迎えられなくても後で連絡が来て「あの時のこの絵はあるか?」「この写真の絵を、ここに送ってくれないか?」等々のケースが多いのが実際なのです。しかもそのスパンが1年から2年と長いのです。ヨーロッパの人たちはその場ではすぐに決めない主義なのかもしれません。
▲美しい街並みをスケッチ
そして、これは外国でも日本でも基本的には同じことで、出会いを得るには画家自身のアプローチが必須です。
ただただボーっと待ってても、良い出会いはありません。
地元のレストランに食べに行って仲良くなって作品展を宣伝したり、近所のお店にハガキを置いてもらったりは当然のこと。
個展の期間中はかなりタフに動かなくてはなりませんし、会話が成立するかしないかよりも「私の作品だ!」という顔をして話さないといけません。
「上手く話せる自信はない」と思うかもしれませんが、案外これは思うより楽しく簡単に慣れるし、案外滅茶苦茶な言葉でも通じるものです。
2週間の個展が終われば、あとは楽しい嬉しいスケッチ旅行が待っていると思えばどうってことはありません。
また、個展開催中の2週間はギャラリーと宿の往復も含めて、もうクッタクッタになりますので、速攻爆睡出来て健康的に過ごせます。夕飯もワインもおいしいですしね!
個展は「出会いの場」でもある
個展を開催する意義は、ビジネス面だけではありません。絵を通してのお友達が出来る事も嬉しい成果です。
時々遠い国にいる私にフランスの彫刻家から「今度ニースで展覧会をするけど一緒にどうだい?」とか、写真家からも「新しいギャラリーがリヨンに出来るけど一緒にやらないか?」など、ありがたいお誘いを受けます。
そう簡単にオーケーと言えることではないですが、上手くタイミングが合えばそれもまた楽しい企画になるはずです。
個展を通してビジネスを成功させることも勿論大事ですが、こういった新たな繋がりが生まれるのも一つの醍醐味です。
フランスの個展開催の思い出まとめ
「海外で個展を開きたい」と思う若手の作家は沢山いると思います。その想いをぜひ実現してください。
フランスはそもそも芸術家を尊敬し、温かく迎え入れる土地柄であり、そしてとても懐が深いです。大事なのは、アクションを起こせるかどうか。ぜひ、1歩を踏み出してみてください。
今回はフランス地方都市での最初の個展のお話でした。次回はフランスでのアーティストとの出会い、そして具体的に作品の運搬についてのお話をいたします。