2008年に誕生した水可溶性油絵具「DUO」。水でやわらかくしたり薄めたりできる画期的な油絵具として人気を博しています。油絵具独特の匂いもなく、溶剤に敏感な人も使えるのも魅力です。
実は、私自身もアレルギーで油絵具が触れなくなり、DUOにより再び油絵を描けるようになった一人。
今回はそんな実体験をもとに、次世代油絵具DUOの魅力を解説します。
突然油絵が触れなくなる!
本来の絵画作品(タブロー)は「油彩」だと昔から言われていました。
私も絵描きとしてスタートした頃は油絵で100号、150号と大きな作品を描いていました。当時は狭いアパート暮らしで、その溶き油をネズミが夜中に舐めに来るなんてこともありました(笑)
20年ぐらい前までは「水彩」はあくまでも習作で、絵画販売の対象にはならない時代でした。
そんな時代でしたので当然デパートのギャラリーでも「油絵」しか扱わず、水彩画を持参しても取り合ってさえもらえませんでした。
しかし、丁度40歳になった頃に突然、油のおそらく石油のアレルギーが出て急に油絵具が触れなくなったのです。これは困りました。
そんな時に何とか油彩に負けない、並べても見劣りしない絵画をと水彩パステルの混合技法をスタートさせたのです。
私にとってそれは功を奏した結果になった訳ですが、やはり油彩への思いは消えることがありませんでした。
勧められたアクリル絵の具を試しましたがあの油絵具の持つ独特の発色と重厚感にはかないません。
画期的画材・次世代油絵具DUOの誕生
2008年ホルベイン社から次世代油絵具「DUO」が出た!と聞き早速買いに走りました。
「人にも環境にも優しい絵の具」「毒性も臭いも無い」水で溶き、水で描き、水で洗える・・・という正に画期的な絵の具が改良に改良を重ね、ア―ティストレベルのクオリティで完成したのというのです。
私にとってこの知らせは待ちに待った時が来たというだけでなく、どれだけ多くの絵画愛好者が喜ぶだろうと眠れぬほど興奮したことを覚えています。
あれから約10年余り。海外、特にアメリカではほとんどこのDUOに切り替わっていますが、日本はまだまだ従来の油絵具が強くこんなに素晴らしい画材が容易に地方でも手に入るといった状況では残念ながらありません。
画壇、画材店が保守的であることや、まだ指導者も少なく本来の良さが一般には知れ渡ってないのかもしれません。
ただ時代の流れとともにまず環境にやさしい、油が苦手な人も使えるということは、今後どんどんシェアが広がってゆくと思っています。
DUOの素晴らしさとその可能性
DUOの魅力は、とにかくあの石油系の油のにおいがしないという事。
そして水でも油でも溶けて描けるという事。
何より素晴らしいのは水で洗えるという事なのです。
あの独特な臭いが無いため台所でもリビングでも広げて描くことが出来ます。
私はやりませんが、水だけで描いてテンペラ画のような作品を創り出す作家もいるようです。
色数も発売当初に比べ、かなり増えて従来の油絵具と同じぐらいの種類がありますし、もちろん発色も全く遜色ありません。
また、DUOは通常の油彩よりも若干乾燥が早いこともあって、私はスケッチに持っていくこともあります。
2013年から15年まで毎年2回ほど長期に出かけた海外スケッチツアーにも持参して、そのままパリの画廊に置いてくるという荒業をやったこともあります。
私にとってはそれくらい構えなくても良い気軽な画材になっています。
私は基本的に画材を選びませんし、どんな画材でもそれぞれに合ったもので作品に向かうのは大賛成です。
今は水彩画とか何々画とか分けて言われることが多く、色々なところで線引きされる風潮がありますが、絵は絵です。画材はなんであっても人の心をつかむ作品を制作することが何よりも大事です。
とは言え「油彩」はやはり王道であると認めざるを得ません。
乾燥に時間がかかるのは劣化しにくいということ、何百年経過してもその輝きが消えないのは油彩の持つ偉大な魅力だと私は思います。
DUOを使用して描いた村田旭の絵画
DUO1 「INTERMISSION 開幕」F8
開幕前のバックヤード。バレリーナの後ろ姿らから緊張感が伝わってきます。
スケッチの中から重厚な表現にしたくて油彩に起こしなおしました。
DUO2
パリ16区のギャラリーに南西フランスを廻って描いてきた作品をそのまま置いてくる。
DUO3 「ジーザス・ジャルダン」F10
この作品も水彩パステルで2度スケッチしたものです。
朝日の中で庭仕事をするマダムの後ろ姿、
花々の色、葉の色の深い重なり。油彩ならではのタッチで表現することが出来ます。
アトリエヴァーズノワールDUOの教室
アトリエヴァーズノワールでは水彩パステルの混合技法とともに、2009年から油彩DUOのレッスンも開催しています。
臭いがないから油彩だと気が付かない方もいるほど、ジャブジャブ水で筆を洗う音が響きわたり最初はちょっと不思議な感じがしました。
水彩パステルを始めた生徒さんも少し経つと油彩を描きたくなるようで、アトリエではそれぞれが自由な画材でモチーフに向かっています。
油彩(DUO)を始めたことで、水彩パステルの時には気が付かなかった色ののせ方をマスターしたり、塗り重ねが容易にできることで大胆な作品構成にチャレンジしたりと、さらに楽しさが広がったような気がします。
その日に仕上げる水彩パステルと違いDUOは最低でも3回程度のレッスンで仕上げます。
このゆっくり感が自分に合ってるという生徒さんもいますし、教室展の時に水彩パステルとDUOそれぞれ2作品を並べて比較するという楽しみもあるようです。
先にお話ししたように画材は基本的に自由です。
自分にあったものを、負担のないものを楽しく使い作品に向かうのが一番です。
アトリエでは生徒さん自身がモチーフを見て今日の画材を決めます。
アトリエの中DUOを広げる人、水彩パステルで描く人、それぞれがお互いの作品を見れることもとても良い学びになっています。
教室展覧会でもそれぞれの画材の特性を生かしたバラエティ豊かな作品が並びます。
来場されるお友達やお客様ともお話が弾んで皆さんにとって楽しい時間になっているようです。
教室は郡山・東京・大宮の3箇所で開講しています。詳細はこちらよりご確認ください。
https://vasenoir.jp/lesson/
次世代油絵具DUOを使って油絵を楽しもう
油絵具DUOの魅力をご紹介しました。私のようにアレルギーで油絵具が触れない、匂いが苦手という方にも使える、まさに次世代油絵具です。
アレルギーや匂いに悩んでいる方だけでなく、油絵で新しい表現を身に付けたい方にぴったりの画材ですので、この機会にDUOを試してみてはいかがでしょうか?