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画家が教える 絵が上手くなるためのヒント vol.2 〜2度描きのススメ〜

この記事を読んでいる方はきっと、「どうしたら絵が上手くなるのか?」と悩んでいることでしょう。そんな方にぜひ試してほしいのが「2度描き」です。

2度描きとは、絵を描くのを途中で止めて、もう一度新しい紙に描き始めることを意味します。
この方法を試すことで、きっとあなたの絵画は「作品」として素晴らしいものになるはずです。

今回は、何故2度描きをするのか?や、2度描きで何故絵が上達するのか?など、「2度描きのススメ」を画家が解説いたします。

前回の絵が上手くなるためのヒント vol.1「モノではなく「空気を」描く」はこちら▼
https://vasenoir.jp/painting_technique_210531/

 

何故、2度描きをすると良いのか?

ここで言う「2度描き」とは、描いている絵を途中で描くのをやめ、再度新しい紙に描き始めることを指します。

たとえば、テーブルの上にセットした花を描く場合、いつものように描き始めて30分ぐらいしたら、一度筆をおいて描いてる途中の紙を下に置きます。そして、同じ位置でもう一度新たな紙を用意して描き始めるのです。

もったいない方法に思えるかもしれませんが、画家である私自身も普段行っていることです。

何故、こんな大変なことをするのか?それは、絵を描いていると段々「写すこと」に集中してしまうからです。

 

何故、絵を「写すこと」に意識が向いてしまうのか?

「写すこと」に集中してしまうとは、どのような状態なのか説明しましょう。

絵画教室の生徒さんを見ていると、最初はモチーフを大きく捉え、ざっくりとした筆使いでとても良い感じなのです。細部までは見ず、雰囲気で描いているので、見る側もそこに入り込める隙間があります。

 

ところが、描き進めていくと細部まで見始め、描けるものから順に描くようになります。
つまり、テーブルの上の花瓶に咲きほこる薔薇よりも、セットされた果物や花瓶、さらには、薔薇も一輪ずつきちんと見て描写し始めるのです。

このような状態になると「写す」ことに専念してしまい、上手に写せないと四苦八苦した末、自分でも描くのがつまらなくなってしまうのです。
すると、途端に最初の感動が覚めてしまい・・・素敵なテーマでスタートした夢の世界から現実に目覚めてしまいます。

絵画教室の生徒さんの作品でも「このまま描き進めたらどんな素晴らしい名作が生まれるだろう」と思うほどの絵が、時間が経つごとに「つまらない作品」になっているのを度々見かけます。

自分でもつまらないのに、見る人がその作品に感動するわけがありません。「技術はあるけど絵が上手くならない」と悩む人には、こういった背景があると私は考えています。

 

大事なのは「モノ」ではなく、「心」を描き出すこと

実は「描けるものを描いてしまう」のは、プロである私自身もよくやってしまう失敗なのです。
「これは描ける!」と自信のあるものを選んで得意になって描く。だけど、その自信は見る人にとってはどうでも良いことなのです。

絵を見る側は描き手が得意になって描いた作品を見たいのではなく、「描き手の感動」を感じたいのです。
本当に心動かされたモノにくらいついて、何とかその気持ちを人に伝えるために筆を走らせる。感動を描くというのは、こういった行為のことを言います。

「モノ」を描くのではなくその感動を「自分の心」を描き出すこと。絵が上達しないと悩んでいる方は、この失敗に気付いていないのではないでしょうか?

 

2度描きすることで「作品にする」意識が生まれる

2度描きは、「モノを写してしまう」という最も重要な失敗を回避するのに大いに役立ちます。
描き始めの30分は空気やモチーフを大きく捉えながら、これからどのように仕上げていくか頭の中で思いを巡らせる素敵な時間です。描き手の感動もまだ残っています。

本来なら、ストップをかけて欲しくはないのですが、あえて勇気を持って一度止めてみましょう。そして、再度まっさらな気持ちでモチーフに向かいます。

すると、先ほどとは違った視点や気持ちで絵に向き合えます。
モチーフをどのように配置したら良いか、どこら辺にポイントを置いたらいいかすでに一度やってることなので、2度目は筆の勢いも迷いも無く進められるはずです 。

そればかりか、1度目とは違う色が見えたり。空気の色を更に鮮明に感じることが出来るはずです。1度目は青で描き始めたのに、2度目はもしかしたらワイン色でスタートするかもしれません。おそるおそる進めていない分、スピード感も増し、発色も美しいはずです。

ここで重要なことに気づきます。
2度描きをしていると「作品にする」という意識が生まれてきます。
作品にするには何を描いて、何を描かなくても良いのか・・・と1度目よりも冷静に絵に向き合えて、考える余裕も出てきます。

「手前の果物よりもバラが大事なんだ」「花瓶は白いけど影になってるから暗い色だ」とか、「葉の色は緑じゃなくて案外暗いもの」「青っぽい色がこの場合は葉の色に適してるかも」など、新たな視点で見ることができます。

言い方を変えれば「作品をデザイン出来るようになっていく」のです。だまされたと思って是非試してみてください。多くの気づきが得られるはずです。

あるいは、こんな場合もあります。
2度描きした絵も30分経過したぐらいでちょっと手を止めて、1度目の絵と見比べてみましょう。すると、1枚目の方が良いと感じる場合もあります。
そうしたら、また1枚目の途中作品に手を入れればよいのです。
すでに作品のデザインは出来てるのですから、どちらでやっても同じことです。

下の画像は私がレッスンの時に生徒さんにデモとして描き方をお見せしたものです。

左のが最初に描いたもの約40分(30分よりも描きこんでいますが最初の印象という意味でご覧ください)右側が2度描きしたものです。
描いているものは同じですが、全く違う2枚ですよね?

好き嫌いや良し悪はともかく、絵をデザインするという意味がお分かりいただけるかと思います。

なんだか上手く描けない!と悶々と苦しむよりも、いっそ新しく描き直してみましょう。
見落としていた点や、新しい発見に気付き、より素晴らしい作品になるかもしれませんよ。

 

2度描きで、より上手な絵を、より素敵な絵を生み出そう

今回は2度描きのススメということで、2度描きの方法やメリットなどをご紹介しました。
絵が上手くなりたい…と悩んでいる人は、ぜひ試してほしい方法です。あなたの絵に、新しい色や、美しさが生まれるかもしれません。

さて絵がうまくなるためのヒントその3は「絵は静止画はない」をまた近いうちにお話したいと思います。次回の更新もお楽しみください。

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